手術当日。終わらない1日(その2)
その時看護師さんがそばに来て,「眠れないようですね。眠剤を点滴に入れましょうか?」
と聞いてくれました。
この言葉が呪いを解いてくれる呪文のように聞こえ,一気に気分が幸せになりました。
「はい。」と答えるのが精いっぱいで,今私はしゃべることも困難な状態に陥っていることがわかりました。
看護師さんが,「点滴に眠剤を入れましたよ。眠れるはずですよ。」
と天使のような声でおっしゃいました。
私は「お願い。もっと何かお話してください。声が聴きたいのです。」と恋人に訴えるような言葉を心の中で語りかけました。
実際,言いたいことを声に出していうことが困難な状態なのです。
だから,言いたいことを心の中でつぶやいていました。
しかし・・・。
眠剤を入れてもらったのに全く眠れないのです。
私は絶望しました。
早く翌日になってもらいたいのに時間が永遠に続くようでした。
その時突然薄暗い目の前に絵本が見えました。
絵本は何も書いていませんでした。
灰色のページがゆっくりとめくられ,次のページも灰色で何も書かれてませんでした。
そして次のページも,その次のページも,ずっとずっと何も書かれていませんでした。
ゆっくりとゆっくりとめくられていきますが,何も書いてないので全くつまらなく,いつまで続くのか不安でした。
おそらくこの絵本の時間は眠っていたのだと思います。
絵本から意識が離れて,やっと翌日が来たと思いました。
しかし,まだ当日のようでした。
こんなことが続いて,私の感覚では翌日が来るまでに10日ぐらいかかったような感覚でした。
そしてとうとう翌日が来たようでした。