ICUで溺れそうな感覚に(その2)
「信じられない!!
この人も手術直後のはずだ。
なぜ起き上がって先生と話すことができるのか?
しかも私より年を取っている!」
このような驚きが私の中で沸き起こりましたが,どうすることもできませんでした。
しかももう一つ気づいたことがあります。
この女性には家族の付き添いが数人居たのです。
付き添いの人たちが先生に話しかけていたのです。
「え?ICUに家族が来てもいいのか?
つくばM病院では顔を見るくらいしかダメだった。
病院によって違うんだな。
まあ,うちはつくばで遠いので旦那は来られないが。
なんだか寂しいな。」
こんなことを心の中でつぶやいているうちに先生方のざわめきは消えていきました。
また静寂がやってきました。
たまに前の女性と付き添いの人の話し声とパソコンのキーボードの音が聞えますが,静寂です。
今思い出しましたが看護師さんが打っているキーボードの音がものすごく大きかったのです。
「最新式の設備を備えているのにキーボードは古いのか」と心の中でつぶやきました。
また,永遠に続く動けない時間との戦いでした。
頭はクリアーで鋭敏に働いているのですが,チューブに繋がれた体は全く動かず,顔を動かすこともできません。
さっきから今まで10分は経っただろうか?
それから今また10分は経っただろうか?
こんなことをおよそ30秒ごとに延々と考えているのです。
ICUは3回目でしたが,こんなに長く感じるのは初めてでしたし,体が全く動かないのも初めてでした。
硬膜外麻酔で痛みはコントロールされていて,ただただ時間の流れが遅すぎるのだけが苦痛でした。