やっと聞き出した東大病院。(その1)
6回目の抗がん剤後の白血球チェックの日が来ました。
この日は朝からドキドキしていました。
白血球が下がっているか不安だからドキドキしていたわけではありません。
今日は旦那の考えた策を実行する日だったのです。
ああ。私が役者ならよかったのに。
下心を持ってI先生と話すのは本当に辛い。
大河ドラマとかで凄い策を決行して,それがうまくいきそうになくてもう駄目だというときに,救いの手が入り策がうまくいったとかよくありますよね。
そんなことを馬鹿みたいに考えていました。
採血後名前が呼ばれて診察室に入りました。
I先生が白血球の値を教えてくれて,診察も終わろうとしたその時に,私は思い切って先生に話しかけました。
私:「そういえば先生,今回の抗がん剤は延期かもと思っていたんですよ。癌学会とかおっしゃっていたから。」
I先生:「ああ。癌学会と重なってたしね。」
私:「すごい発表とかあったんですか?うちの旦那もよく学会とか行くけど。」
I先生:「ああ。旦那さん研究者だもんね。うん。面白い発表あったよ。いや~。今は凄いよ。コンピューター使ってね。肝臓の癌の場所とか特定するんだよ。」
私:「でも今までもCTで場所の特定はできていましたよね。」
I先生:「そうだけどCTはいわば影絵を見ているようなものだからね。」
私:「そうですか。最新は凄いですね。じゃあもし先生が肝臓がんになってしまったらその病院に行きますか?だってご自分でとれないでしょ?その病院ってやっぱり国立がんセンターでしょ?」
I先生:「いや。僕なら東大病院に行くよ。その発表って東大病院だったんだ。すごいよ。」
ああ!!ついに! ついに聞き出したぞ!!
やった!やり遂げたぞ!!
私は心の中で飛び上がりました。
震える心を一呼吸おいて落ち着かせて先生に言いました。
「先生。私,東大病院で診察を受けようと思います。紹介状を書いてください。」