懸命に看病する母と病気の娘。(その2)
しかしびっくりしました。
玄米菜食とか自然食とかマクロビとかがありますが,内容は玄米,具だくさん味噌汁,メインの料理,きんぴらという感じです。
中国ではそれを餃子という形でアレンジするのでしょう。
それはいいとして,彼女のお母さんは小さいころから娘さんに食材にこだわって手作りの料理を食べさせてきたのです。
彼女は肝移植を受けたのでした。
私がこの部屋に来たときは移植後で経過を見ている時でした。
食にこだわって手作りのものを食べさせ,大切に大切に育ててきた娘が肝臓の病気になり,母子で手術を受けに日本にやってきたのです。
移植後,たびたび高熱が出たり,具合が悪くなったりして,ずっとあの部屋で経過を見ていたのでした。
しかし,最近はかなり良くなってきて,お母さんの作ってきた水餃子をパクパクと食べていました。
そして相変わらず不愛想な顔でお母さんと話し,お母さんは早口の中国語でしゃべりながらマッサージをしてあげていました。
この部屋の二人の若い娘さんたちを見ていて強烈に感じたことがあります。
それは「母の愛情は強くて深い」ということです。
花嫁のお母さんは,身を切られる思いで自分の立ち位置を,お婿さんに明け渡しました。
そして中国の娘さんのお母さんは,目いっぱい愛情を注いでいました。
どちらがどうとかいう話ではないのです。
母,娘,旦那という最も近しい人たちが,ベットの周りの小さな空間で生きているのです。
甘えたり,笑ったり,不機嫌だったり,とにかく愛情のやり取り行っているのです。その小さな空間で・・・。
死と隣り合わせの重い病気。
この部屋にいる人はそんな重い病気を背負っている不幸な人です。
しかし,この部屋の中は暑苦しいほどの愛情があふれていました。
そんなことをじわじわと感じました。