退院直前に高熱が。(その2)
点滴を再度取り付けて,髪を乾かしているうちに大変な事に気が付きました。
水が無くなっていたのです。
慌てて,1階まで行ってペットボトルの水4本を買ってきました。
これは予想外に重労働です。
点滴スタンドを押しながら,1階の売店で買って,片手にペットボトル4本,片手で点滴スタンド操作をしながら,9階まで帰っていくのです。
部屋に戻ってきて,倒れこむようにベットに横になりました。
「さすがに疲れたわ」
と思って午後の体温測定をしてみたら,40℃ありました。
「え?40℃もある。え?何?」
と思わず声を出したら,前の音楽家の彼女が,
「え?うそでしょ? 退院間近なのに何? ナースコールしたら?」
という言葉でハッとしてナースコールをしました。
看護師さんがやってきて,採血して,いろいろ聞かれましたが,ただただ忙しく日常をこなしていただけなので何が何だかわかりません。
しかも,忙しくしていた時は何も感じていなかったのに,熱があるという事実がわかった瞬間に,体が辛くなってきました。
そして,その後はずっとベットで苦しんでいました。
夕方の回診時に,主治医のT先生が,
「熱のため退院は延期です。」
「熱の原因として考えられることは,感染です。」
「僕はそのCVポートが怪しいと思っています。」
「後でS先生と一緒に来ます。」
とおっしゃって去っていきました。
退院が延期になったことをとりあえず旦那にメールしました。
旦那からは「了解」とだけ返事がきました。
とにかく旦那は私が東大病院に入院しているので安心しきっているのです。
これが家で熱なら,大騒ぎなのだけど病院なので「まあ,何とかなるでしょ。」という感じです。
その後S先生とT先生がやってきました。
S先生はお弁当が入ったコンビニ袋を持っていました。
この東大で移植とか難しい癌とかの手術をするトップクラスの先生と,弁当が入ったコンビニ袋が不釣り合いでまじまじ見てしまいました。
T先生が「僕が怪しいと思っているのはCVポートで・・・」と話している間中,S先生はある1点をまじまじと眺めていました。
それは傷口から出ているチューブの先のボトルです。
T先生が話し終わった後,S先生は
「うん。でも僕はこっちの方が気になる。黄色いよね。ちょっと。」
とおっしゃいました。
それから急きょ点滴に薬を添加して,
「じゃあ,明日の白血球の値を見ましょう。では僕は弁当を食べたいのでこれで。」
と言って去っていきました。