手術と結婚(その2)
結婚してきた彼女はそれまでの彼女と何か変わったか?といえばどこも変わってはいませんでした。
私は彼女の心に自分の心を合わせてみました。
午前中は家族も来てなくて私たち4人だけです。
回診が終わって,シャワーの順番を決めて,順番の人はシャワールームに行っています。
私の隣のベットで彼女は一人で黙って寝ています。
私はこの時彼女の心に合わせてみました。
と言っても,特別なことは何もしていません。
彼女の心を想像するだけです。
彼女は若いのでなかなか想像が難しいのですが,自分の若いときを思い出しながら想像してみました。
するとこんな気持ちになりました。
「私は死ぬかもしれないが結婚できた。ありがとう○○君。」
「この若さで死ぬのは無念だが結婚できた。ありがとう○○君。」
「ありがとう。○○君。」
そうか。
今感謝の気持ちが心の大半を占めている。
もちろん辛さや,無念や,恐怖の気持ちもある。
しかし,結婚したことで感謝の気持ちが暗い心に割り込んできた。
とか言って,全く私の見当違いかもしれません。
しかし,私はこんなに他人を観察したことはありませんでした。
私は術後とても大変で自分のことでいっぱいでしたから。
それに特に大変でなくても私はあまり他人の事に関心がないのです。
そう。冷たい性格なのです。
しかし,この時隣のベットの若い花嫁に対して,なんというか温かい塊のようなものが私の心に芽生えました。
生きるってすごいのです。
人は凄い力を持っているのです。
そのことがわかりました。